慈が示した部屋は階段を上がって左手の廊下すぐにある部屋だった。
だけど、綺羅が感じた強い邪念を感じるのはこの左手の突き当りにある部屋だった。
情報とは違うが、この感じが自分の間違いだとは到底思えない。
綺羅は自分の感を信じ、ゆっくりとだが、部屋を見渡しながら剣を握る手に力を込める。
見渡す部屋には特別に何かがあるようには見えない。
綺羅は注意深くゆっくりと部屋の中へと足を進める。
床は相変わらず年季の入った感じがするが、階段やドアのように歩くたびに耳に衝く音を出すことはなかった。
「………ピアノ?」
足を進めていくに連れて、真っ黒な物体が何かが見えてきた。
綺羅はゆっくりとピアノへと近づいて行く。
バタンッ!!!
急な物音に綺羅はビクリと肩を上げると、反射的に音のするほうを見た。
「………うそだろ……?」
走り出すと綺羅は思いっきり、部屋の扉のノブを掴んで開けようと試みる。
だが、扉は虚しくカチャカチャという音を出すのみでビクリとも動かない。
閉じ込められた――――
そう感じた時にはすでに遅すぎた。
一斉にピアノが鳴り響いたかと思うと、ピアノの周りには小学生ぐらいの数々の少女たちの姿をした無数の霊たちが群がっていた。
「…遊んで………」
微かに聞こえる声はそう発していた。