真里のやつ、怒ってるだろうな~…。







 二階に上がり、左手の廊下を突き当りまで突き進んだところで、綺羅は壁に這うような形でフッと表情を柔らげた。







 あのまま、あの場所で真里を説得したところで、真里は綺羅が危険な目に遭うことがわかっていながら頷くことがないのは綺羅もわかっていた。


だから、あえて綺羅は真里の言葉を聞かずに自分だけで強行突破を貫いた。


無謀な行為かもしれない。


だけど、あの時に感じた強い邪念を思い出すと、綺羅は今の自分の行動が最善の行為だと思っている。


「さてと………」


綺羅は呟くと、両の手を合わせた。


その瞬間、合わせた手のひらが眩しく光りだした。


綺羅はゆっくりと左手から右手を引き離す。それと同時に左の手から光り輝く一筋の剣が現れた。


初めこそ光だが、光はどんどんと形作られ剣へと変身を遂げる。







 綺羅は持ちなれた感じで剣を握り、左右に十字に軽く剣を振るう。


そして、ゆっくりと右手に持ち横に下ろすと、そっと壁伝いに一番近くにある部屋の様子を窺いながら、部屋の扉をゆっくりと開いた。







 ギィ~………






気味の悪い錆びた音が綺羅の耳を襲う。


耳に衝く嫌な音に綺羅は顔をしかめる。


しかし、視線はじっと部屋の中へと向けられたままだった。







 空気の流れが変わった?