「だって~~~…、今、真里ちゃんが嫌な空気が流れてるって。やばいんだよっ! いるってことだろ?」
「あんたね~、それでも男なの?」
「こんな人知を超えたようなもの相手に男も女もないだろうが。どうせ、俺にはどうすることもできないんだから」
「だからって、情けなさ過ぎよ!」
ぎゃあぎゃあと狭い階段で揉めている柏葉と慈を通り越して、綺羅は二階をじっと見る。
確かに、真里の言うとおり嫌な空気が流れている。
それも、微かな邪気のようなものではなく、結構深い念のようなものさえ感じる。
「お前ら、真里と一緒にこの建物から出てろ」
「「えっ!?」」
「綺羅くん?」
言い合いをしていた柏葉と慈は、言い合いをぴたりと止め、綺羅を見る。
一方、真里は自分も一緒に建物から出るように言われたことに不服そうだった。
「これは、結構やばいかもしれない。二人を守ることも厳しいかもしれないぞ」
「でも、それなら二人は外に出てもらって私はここに残っても」
「真里。建物の外に出たからといって絶対に安全かと言われたら俺にもわからない。お前は二人を守ることに専念しろ」
「でも、それじゃ、綺羅くんは?」
純粋に自分のことを心配してくれる真里に綺羅はニッと笑う。
「俺は大丈夫だよ。深青には及ばないが、お前も俺の力はわかってるだろ?」
「そ、それは………」
真里が言いよどんでいる間に綺羅は柏葉と慈の横を通り過ぎて、階段を上る。
「綺羅くん!?」
「じゃあ、真里。頼んだぞ」
まだ、何か言いたそうな真里をほって綺羅はただ一人で二階へと上がっていった。