「大丈夫だよ、柏葉くん。何かあったら、結界張るから」


「うん。よろしくお願いします。真里ちゃん」


「だ~か~ら、さっきから言ってるでしょ! あんたは何かあった時の私の盾となるためなんだから! そんなに真里にしがみついてちゃ、盾にならないでしょうがっ!」


慈はそう言うと、真里にしがみつく柏葉をベリッと真里から引き離した。


「うわ~~~っ、横暴だ~~~!」


「ちょっと、慈。そんなむちゃくちゃなこと言わないの。柏葉くんが可哀想じゃない」


ぎゃあぎゃあと三人で揉めているのを横目で見ながら、綺羅はハァ~と溜息を吐かずにはいられなかった。













 「それで? その怪奇現象はどの辺りで見たり聞こえたりされたんだ?」







 やっとのこと揉めていたのが落ち着いたところで、綺羅は建物の中のホールみたいな場所で辺りを見回した。


「え~っと、確か二階に上がってすぐの左側の部屋………」


慈は小さなショルダーバッグから手帳を取り出すと、指で二階を指す。


「左側って………」


綺羅は眉を顰める。


それもそのはず。


慈の説明は大まかで、階段を上がって左側の部屋だということはあるが、洋館というだけあって中の部屋数も相当のものでただ左側と言われたところでどの部屋だかはわからない。


「ちょっと、見せてくれ」


そう言いながら、慈の手帳を取ろうとしたところ、慈は「ダメ!」と手帳をバッグの中へとしまってしまう。


「………おいっ!」