「何よ~…。無視するわけ~? じゃあ、いいわよ。こっちには人質がいるんだから」


「はぁ?」


意味のわからないことを言い出した慈に反応して、綺羅は慈のことを見る。


すると、慈は真里に後ろから抱きついた。


「別に、わざわざ麻生くんから聞く必要なんてないのよね~。もちろん、麻生くんから聞くのがベストだけど、真里から聞いても一緒だから」


ムフフフフ…と気味悪く笑う慈とは反対に真里は顔面蒼白だった。


「慈~…、私に聞いても、私も話すつもりなんてないよ」


そう言いながらも、真里の言葉は弱々しい。


長い付き合いの真里は、どう足掻いても慈には勝てないことを自分でもよくわかっていた。


そして、それはもちろん綺羅も。







 綺羅はハァ~…と溜息を吐くと、諦めたように慈を見た。


「わかったよ。話すから、真里のことは離してやってくれ」


「そうこなくっちゃ!」


うれしそうに言うと、今まで拘束していた真里を慈は解放した。


「それで、それで!?」


待ちきれないとばかりに綺羅を急かす慈。


そんな慈を横目で見ながら、真里は心配そうに綺羅を見る。


「綺羅くん。本当に話していいの?」


心配そうに聞いてくる真里に綺羅は安心させるように微笑んだ。


「ああ。別に隠さなくちゃいけない話でもないだろう? どうせ、俺たちのこともこいつらは知ってるんだから」


そう言うと、真里は少し納得したみたいだった。