「あの鳥………。どう考えても、尋常じゃない力を持っている…よな………」





 頭の後ろで腕を組みながら、真之はソファの背もたれに力をあずける。


「うん………。だけど、真之はちょっと焦りすぎよ。あからさまに麻生くんに言いすぎ。もっとやんわりと言わないと。だからすぐに敵意を持たれるのよ」





 狭いキッチンで手早くコーヒーを作っていた礼香は二つのマグカップを持ってくると、一つは真之が座るソファの前にあるテーブルの上に置いた。


「別に俺は麻生と仲良くなるために、この学校に来たわけじゃない。仕事の依頼があったからだ。お前こそどうなんだよ」


「ど、どうって………?」





 突然、話をふられた礼香は顔を赤らめながら視線をあさっての方向へとめぐらせる。


「お前、この仕事を引き受ける時に、麻生に会えることを楽しみにしてたじゃないか」


「そ、それは………」





 言葉に詰まっていると、ジッと自分を見てくる真之の視線を感じ、礼香はマグカップに刺さっているティースプーンを勢いよくかき回す。


「だ、だって、だってよ。偶然見かけた通りすがりの王子様とお近づきになれるチャンスなんだよ? 楽しみにしない人なんていないわよ」





 顔を赤らめている礼香を見ながら、真之は軽く息を吐いた。