確かに真之の言うとおりに、真之たち二人の力でさえも及ばなかったあの魔物を唯一、簡単に撃退した初の力を調べれば対処法と共に、危険は回避されるだろう。


 だけど、だからといって、差し出すことは綺羅にはできなかった。





 自分が引っ越してすぐに消えた如月家の消息。


 誰にも告げずに、まるで逃げるように代々続くその地を去っていったその状況。


 そのことが、綺羅に警鐘を鳴らす。





 初のこの力を真之たちに調べてもらうことで、何かしらの危険を深青たちに降り注いでしまう気がするのだ。





 消えてしまっていると思っていた絆。


 その絆がたとえ細く薄くても繋がっているということがわかった今。


 綺羅もまた、守られるだけではなく深青を守りたいと思った。


 そのことが、会えなくても自分たちの心を結びつけていてくれるように綺羅は感じた。





 深青が俺を守ろうとして、差し出してくれた『初』。





 だからこそ、俺はそんな風に俺の元に残してくれた『初』をどんなことをしてでも守ってみせる。





 綺羅はそう固く誓ったのだった。