「光浦吉備か………。変わった名前なのに、全く覚えがないのよね~…。私は結構生徒の顔は把握してるんだけど………」





 一応、天文部とは名ばかりの部で怪しい仕事の依頼を受けたり、情報収集をしていた慈だ。


 本人が言うように慈は情報通であると共に、このマンモス校と言われている青涼学園の生徒の顔をほとんど把握している。


 だからこそ、和田あゆみの情報もそれなりにはわかっていたのだが………。


「それに、私も和田あゆみがいじめをしている対象相手のことは何人か知っているけど、彼の名前は出てこなかったわよ」


「そりゃ、言えるわけないわ。おそらく相楽さんに情報を提供した人間もそのいじめに加担してたんだろうから」


「え!?」





 つまりは、こういうことか。


 他の何人かのいじめの対象者にはそれなりにクラスメイトたちも同情的だったけど、その光浦吉備に対しては同情どころか一緒になっていたと………。





 綺羅は自分の隣で、まだ動揺している雅俊へと視線を向けた。


「他の子のように頼るところがない。それで、一番の諸悪の根源へと怒りが爆発しちゃったんでしょうね」


「ま、待ってくれよ!」





 礼香がしんみりと言っているところに、雅俊は反論を唱える。