それだけ言うと、綺羅はさっさと部屋を出て行こうとする。


「ちょっと、待って! ちょっと、待ってよ、綺羅くん!」





 呆然と状況を眺めていた真里だったが、ハッと気づくと慌てて綺羅を追いかけて綺羅の腕を掴む。


「降りるとか言わないで。綺羅くんも気になってたんでしょ? 和田さんのこと。これはきちんと解決しないといけないって。ここで投げ出して後悔しない? 絶対、しない?」





 何度も真里にそう聞かれ、綺羅の足も止まる。





 そして、立ち止まっていた綺羅の肩にポンッと手が置かれた。


「真里ちゃんの言うとおりだよ。お前、ちゃんと納得できんの?」





 雅俊にもまで言われてしまい、綺羅の心はぐっと揺れた。


 だけど、その代わりにこのペンダントを真之に差し出すことだけはどうしても綺羅にはできなかった。


「俺は………」











「もう、いいかげんにしてよね。海堂くん、聞いてればこのペンダントが今回の事件の全ての元凶だとでも言いたそうだけど、それって、確信あるんでしょうね」





 ホワイトボードの前で腕を組んで真之を睨みつける慈。


 そんな慈の姿勢にも動じることもなく、真之は慈を見る。


 だけど、答えは違うものだった。


「確信は……ない。だけど…」


「じゃあ、別にペンダントを海堂くんたちに渡す必要ってないはずよね。人の大切なものよ。それなりの確信を持ってから言うべきことじゃないかしら」





 筋が通っているようで通ってないようなよくわからない言い分だが、普段の慈の態度からは想像もできない。


 そのため、真里と雅俊は「ほ~…」と、一斉に感心の声を上げた。