あまりにもいきなりで、僕は間抜けな悲鳴を上げながら地面に倒れ込もうとする体を、間一髪、腕で支えた。


「雄太、遅すぎなんだよ!ばか!すっとろいんだよナメクジ!」


どうやら僕を蹴ったであろう背後からするこの口汚い聞きなれた声の持ち主に、僕は二度驚かせられることになる。
地面に手をついたまま、まるで跪くような格好のまま、首を捻って背後を振り向けば、顔をしかめっ顔をし、仁王立ちのあの子、もとい純子ちゃんがいた。


「ご、ごめんね。寝坊しちゃって」

「ばっいいよもう、しつけーんだよ」


鼻をすすり、緩む涙腺を手で擦りながらぐずる僕を見下ろす純子ちゃんは、少し焦ったように吐き捨て、「さっさと立ち上がれよ」と百八十はある僕の体を引っ張って、起こしてくれた。


「ありがと」

「ん」


純子ちゃんは肩まではある茶色の髪を耳に掛けながら、気恥ずかしそうに僕から視線を外す。
微かに頬を赤らめる彼女に、僕の心臓は一層煩くなった。

かっかわいい。

真っ青な空に浮かぶ赤い太陽に照らされる純子ちゃんの横顔に鼻の下を伸ばして見惚れていると、顔を赤くした純子ちゃんに「なに見てんだよ」と軽くふくらはぎを蹴られた。
痛いよ純子ちゃん!