晴天下な冬の青空の下、僕、香川雄太は真冬にも関わらず脂汗を額に滲ませ、ゼェゼェと息を切らしながら家から一番近い駅に向かって走っていた。
足を進ませれば進むほど、視界に入ってきた『〇〇駅』という黒く霞んだ文字が段々くっきりと見えてくるのがわかる。

――やっとついた。

駅前の小さな飛沫を上げる噴水の側で足を止めた僕は、きょろきょろと挙動不審に周りを見渡し『あの子』を目で探す。
「もう帰っちゃったかな」目的のあの子をこの人気のない駅から見つけ出すことが出来ず、すっかり弱気になる僕はそう、小さく呟いた。
その瞬間だった。
もう帰ろうかと駅へ背中を向けたと同時に、背後から僕の後頭部目掛けて何やら堅い物が飛んでくる。
ガコッと音を立て、僕の頭から跳ね返って足元に落ちたソレは、どうやら空のアルミ缶のように見えた。
僕はずきずきと小さく痛む頭を押さえ、些細な痛みに涙を浮かべながらも屈んで、地面に転がるアルミ缶を拾おうとした。
その一瞬の隙を狙ったのか、屈んでアルミ缶を拾おうと腕を伸ばしたと同時に、何者かに思いっきり尻を蹴られる。