「……」


駿はなにも言わない。ただ二人のやり取りを見つめるだけ。

あきれた視線のように見えるのは気のせいではないはずだ。そもそも、駿は静香が好きなのだろうか、婚約者がいるとしか聞いておらずいちゃついた様子も見せないし一方的に静香が好いてるように見える。


暇なので、視線を彼らから外す。花一門目をする女子に、ゲームで騒ぐ男子。どちらにも入る気がしなくて窓際に腰をおろし外を見る。

心地よい気温で外で騒ぐ人々。梓も運動は好きだが、短い休み時間はいつも理生と雑誌を見て騒いだり、グループの子と恋愛話で盛り上げっていた。


もっとも、一度たりとも自分の恋愛話をしたことはないが。だって、相手がいないのだから仕方がない。


「……おかしいな」


顔は間違いなく彼なのに、中身が一致しない。あのはかなげな印象がまったく感じられない。