「そうそう。なんだか知らないけど、櫻井さんと駿君って仲いいじゃん」


それは見張ってなきゃいけないからだとは理生には言えない。理生の口の堅さは知っているが、できる限り他言したくない事情だった。


「静香さんは?」

「あー、付いてくるかも」


ウンザリした表情で手をひらひらさせてる。アナウンスが鳴り電車を降りる。そこで、一人の少女とぶつかった。


「あ、ごめんなさい」

「いいえ」


冴えない印象の地味な子だった。性別は男子。分厚いメガネをかけて顔がよく見えない。制服を見た限り同じ学校。だが、見覚えがない。


「じゃあ、行きますから」


彼はそう言って去って行った。無言で見送ると、携帯を見た。7時55分。


「やばいじゃんっ」

「急げ―」


二人はわき目も振らず駆け出した。