「その場にいなかったら疑惑浮上っと」

「小野瀬には知らせないの?」

「知らせたらどうなると思う?」

「止めるでしょうね」


そりゃあ、一般常識があればこんなことに賛成はしない。

義則なら顔を真っ青にして倒れるかもしれない。それとも、笑顔で行ってらっしゃいと言うだろうか。予想がつかない。


ノリノリの姉妹を余所に梓はうんざりした面持ちで冷めた目で見つめた。ミーハーなのは血筋か。


「オーディションの応募は私がしておいたからっ」


澪は得意げにほほ笑んだ。


「あたしがしたのに」


(もう送ったのかよっ)


これで後戻りはできない。発狂してしまいそうな気持ちを抑えて梓はウィッグをとった。

「あ。なんだ勿体ない」


理生は心底残念そうに呟いた。構ってられるか。梓は部屋を出るとそそくさと家家路についた。途中、視線を感じたが気にせずに食事をとると、睡魔に襲われすぐに眠った。