余計なことだと思いつつ、つい口を滑らせた。梓は口を抑えるが、もう遅い。


「……表向きは平穏じゃなくちゃいけないからね。駿と違って普通の車だけどね」

「悪かったな」

「あ。車来た。僕帰るね」

「ちょっとまって、私見送る」

「いいのに」


いいのに、といわれても義則を独りぼっちにするのはかなり不安だ。生きは軽く洗いし、先ほどから何度倒れると思ったかわからない。


「明日は栄養ドリンクでも飲まなきゃいけないかな。飲んだことないけど」

「保健室に常備しておけば?養護教諭に頼んでおけば良いと思うんだけど」


理生にしては賢い考えだ、と梓が感心した目で見ていると理生に膨れられた。


「じゃあ、行ってきます」

梓は教室を出る。義則の腕を組んで支えるが、一見カップルに見えたかもしれない。よたよたと歩く義則の体は軽く風にでも飛ばされてしまいそうだった。