「大きくなったら、そんな期待してみたかったなぁ」


義則の言葉に心が痛む。梓は将来の夢も何もなく、生きていた。ただ明日が当然にあるとばかり思って普通に過ごしてきた。

それが、できない人もいると最近になってようやくわかってきた。生まれつき欠陥を持って生まれたり、義則のように人工的障害を持たされた人がいると。そんな人たちの手助けを、してみたいと義則と話しているうちに思った。


「恵まれてるなぁ、私って」

「うん、そう思えることが大事だと思うよ」


今の幸せをかみしめる。下を見ても上も見てもきりがないから、自分らしく生きる。それが大事なのかもしれないと梓は感じた。


「僕も、生きれるだけ生きる。だから、一緒にいてほしい。……駄目かな」

「そんな事ない、約束は守るし……何より、義則さんと仲良くしたいよ」

「じゃあ、これから、宜しくね」

差し出された手を取り、二人は握手を交わす。


「行こうか」