「いいえ……死なれても嫌です。生きてるか、ずっと気になってて」
「陰湿な子供だったからねぇ、変な約束させてごめんね」
「それは良いんです。気になりませんから」
「いっそ、ここから清く飛び降りて死ねば良いかな」
まるで人生をあきらめた中年リストラおやじのような乾いた笑いを彼は漏らした。彼なら本気でやりかねない、そう感じた。
「私は生きててくれてよかったです。ずっと、夢にまで見ました……探しては、外れての繰り返しで」
「僕は、この前から気がついてたよ。嗚呼、あの子だって。でも、もう二度と会わないと思ってたから……でも君は、僕と友達になってくれると言った。
うれしかった。本当に君は、優しいね」
「自分のエゴです。……あの時のあなたの横顔は本当につらそうで、ほっとけなくて……幼ないなりに心に引っかかりを感じて。この前も、同じ」
放っておけばこの世界から抜け出してしまいそうな、儚さで。同情、なのかもしれなかった。それでも、耐えきれなかった。見て見ぬふりはできなかった。
屋上の壁に滑るように腰かけて義則は陰に座り込んだ。少し足がふらついている。普段であるかない義則にとっては普通の一日を過ごすのがきついのかもしれない。
「……大丈夫ですか」
顔色をうかがう。少し青白い。