「先生来る前に入ろうよ」
「梓、真面目ぇ~」
笑い声が廊下に響く。短いスカートを揺らしパタパタと教室に駆け込んだ。
しばらくして担任の志村が現れる。隣には……。
「嘘……」
記憶が定かなら、彼はあの時の少年だ。髪は短めに切りそろえられ肌は軽く日焼けして、まるでイメージが違うが彼に瓜二つ。
「小野瀬駿です、ヨロシク」
明るく笑う彼が席に着くのを目で追いかけた。駿君、と唇がつぶやく。駿は梓から離れた奥のほうの席に座ると鞄を掛けた。すぐさま隣の女子が話しかけて、どこから来たかなど聞いてくる。
参照をまとめてみると名前は小野瀬駿。近くの市から引っ越してきて兄弟はいない。運動が得意でサッカー部に入っていた。身長は175センチ。さわやかな細身のルックスで思わず見惚れてしまいそうだった。