「いやあ、ねぇ……ごめんなさい、取り乱してしまって」

ほほほと品よく笑うが、その頬は引きつっていた。

(怪しい……)

梓は直感的にそう思った。


「もう遅いでしょう。送りますから、どうぞ」


要訳、早く帰れ。外はまだ薄暗い程度で、高校生が帰るにはまだ早い。一般的にはいくら門限が早くても6時頃だと思われる。今は5時を過ぎたぐらいだ。理生がこちらをちらりと見て、何かを言いたそうにする。

梓はスカートをはたいて立ちあげると「後でね」と小さな声を耳元でつぶやいた。