そういえば前に理生は何か思い出そうとしていた。それがこれなのだろう。残念そうにつぶやいて溜息を洩らす。


「…………」


駿は黙り込んだまま何かを考えていた。すると、戸が開き、綺麗な女性が着物に身を包み現れた。牡丹柄のソレは赤を基調としていてきれいな黒髪の彼女によく似合っていたた。つややかな肌に播種の紅が引かれ、目元は淡い紫のアイシャドウ。


「こんにちは、皆様。駿の母の和子です」

「……母さん」


にっこりと微笑んで和子。しかし目は笑っていなかった。


「静香さんが出て行ったけど、何かあったのカシラ?」

「なんか、コレ見て……出てったんだ」


駿が雑誌を和子に見せる。和子はそれを見て血相を変えて破り捨てた。その迫力に思わず梓は後ずさる。駿でさえ目をぱちくりしている。


「母さん……?」


驚きを隠せないまま駿は和子を見た。


その視線にはっと気がついたように表情を和らげると、本を畳にそっと置いてほほ笑んだ。