「ねぇ。何してるの?」


少女は少年に問うた。雪の中にしゃがみ込んだ少年は雪を丸めては積み、静かにそれを見つめていた。


「お墓」


少年とは確か同じ幼稚園の同じ学年、クラスは違うが時々みかけていた。男の子としては長い黒髪に長いまつげは女の子のようだった。大人しく目立たない彼を、なぜか彼女は眼で追っていた。


「僕の、お墓」

「生きてるのに?」

「僕が死んでも、だれも心からさようならって言ってくれないから」

「じゃあ、私が言ってあげる」


雪で冷えた少年の手を取り彼女は言った。彼女の名前は梓と言った。まだ3歳ながら、無邪気で元気な彼女はクラスの人気者だった。


「だから、泣かないでね」


死という信念がよくわからないまま、指切りをした。


「約束、だよ」


少年はさみしげに笑った。















次の日から、少年は幼稚園に現れなくなった。