「カッコイイことを言ってるおつもりでしょうけど、ただ意固地になってるだけではありませんか」


ゆるぎない私の意志に対し、
琴湖が堂々たる面持ちで真っ向から反論した。


「ただ手柄をあげたいだけなんでしょう?
ご自分の失態を取り戻すまたとない機会だと。
試練を1人でやり遂げて、やはり自分は立派だと。

取り戻したいのは、“ネックレス”ではなく、ご自身の“自負”なのではなくて?」



「…な!」


そんなことはない、と言い切れず、反射的に、顔がカッと熱くなった。


歩道の真ん中で、対立するかのように向き合った我々を、通行者は不思議そうに見ながら通りすぎて行く。



琴湖はさらに論述を繰り広げた。


「1人で探して見つかることもあるでしょう。3人で探しても見つからないことだってございます。
ですが、たった1人で意地を張り通して、結局見つからなかったら、どう責任をとるおつもり?
みんなで最善を尽くしたけど見つからなかった、とでは大違いですわよ」


反論できなかった。



「不利な状況において、
意地を貫き通すのもご立派ですが、
時と場合を間違えれば、それはただの子どものわがままです」


琴湖は一歩もひかず、ぴしゃりと言いきった。



「一緒に探そうと言っている私たちの友情を受けいれて下さい。
…ですが結局、啓さまは、私たちのことを見下してらっしゃいますものね…。
いいえ、私たちだけでなく、誰のことも認めてはいらっしゃらない。
…口惜しいですわ」


琴湖は目を伏せ、唇をかみしめた。

だがすぐに、キッと強気の顔をむけた。



「冷静になってお考え遊ばせ!

ご自身のプライドと、ご婚約者の宝物。
今!どちらが大切なんですか!」




はっとさせられた。



自身の身体だけ時間が止まってしまったかのように、わずかな間、私は身じろぎができなかった。




かたや、言い切ると琴湖は、私の前を通り過ぎ、公園へと歩き出した。




「…待て!」


「いいえ、待ちません」

振り返らずに琴湖は答えた。