他の写真にも目を通していると、既視感のようなものを感じて視点をとめた。


結婚式の二次会だろうか、未礼の母親は、ドレスからワンピースに着替えていた。

ドレスと同じく、純白のワンピースだ。
その首元には見覚えのある、ネックレスがつけられていたのだ。

馬蹄形のゴールド。

「未礼さんも、これと似たものをつけていましたよね?」


「ええ。このネックレスは私が、娘の成人の祝いに買ってやったものです。
未礼は、それを形見として大事にしているみたいですね」


「そうだったんですか…」
未礼がつけていたネックレスは、元は母親のものだったのだ。



光寿氏の和らいだ瞳が、ふっと真面目になった。

話の流れは真剣なものになるのだろう。
私は若干、身を引きしめた。



「私の娘が亡くなって、四年になります…」


光寿氏の言葉に、私は黙ってあいづちをうった。


「実は、貫太くん…、あ、見合いに同席しました未礼の義理の父親のことですが、近々再婚することになりましてね…」

「え?」
思わず聞き返してしまった。


垣津端家の婿養子で現社長である垣津端 貫太(カンタ)。
確かに、彼は現在独身であるがゆえ、再婚する自由があるのだが…。

見合い時の彼の、低姿勢で人の良さそうだった顔が脳裏をかすめた。



「相手の女性は、うちの会社の社員でしてね。
もうすでに何度となく我が家を訪れてまして、勇とは親しくなっているようですが…」

光寿氏は、思案する表情で、お茶を飲み、口元を引きしめている。


勇にとっては、実の父親が再婚し、新しい母親ができるということだが、
未礼にしてみれば、全く血のつながらない人が両親になる、ということになる。


これは、未礼にとって、どうなのだろう。


「未礼にしてみれば、居心地のよい話ではないでしょうな…」
私の思考に先回りするかのように、光寿氏がつぶやいた。

「…でしょうね」


「ここからは、お恥ずかしい話になるんですが…」
光寿氏は、前置きするように言ったあと、息をつき、

「母親が亡くなってからです。未礼が、家に寄りつかなくなったのは」
そう言って、顔をゆがめた。