未礼は身を乗り出して歓声を上げた。
花束を両手で受け取り、まじまじと眺めた。


暗い縁側では色味がわかり辛いが、ピンク系統の花々をまとめている。


「スタンディングブーケというものらしい。このまま立てたまま飾れるのだ」

「啓志郎くんが作ったの?」

「ああ」

「すごーい!!キレーイ!嬉しい!!ありがとう!!!」


私に何ができるだろう。

未礼に花を贈ろうと思いたち、琴湖に花を習っていたわけだが、花を贈るといっても、どのようなものを贈るか…。


『スタンディングブーケはいかがかしら?』

悩んでいた私に、琴湖が提案してくれた。

『名前も、ご婚約者に贈るにはロマンチックですし』


スタンディングブーケとは、『ブーケのようにまとめた花に、ドレスをまとわせるようなラッピングをしたアレンジ風の花束』であり、
『水入りのプラスチックカップに入っているので、花瓶や水変えの必要がなく、そのまま飾れるんですのよ』だそうだ。

話を聞き、“これだ”と思ったのだ。


ピンクの花々をまとめ、ラッピングペーパーとリボンは白にした。


未礼は、やわらかいピンクのイメージだ。
さらに、後夜祭にて未礼が着用していた白のドレス姿が、今でも印象深く記憶に残っていたからだ。


『啓さまって、意外とキザなんですわね』と琴湖は笑ったが、中途半端なものなら、贈らないほうが良いと思った。

今、私ができる精一杯を尽くすのだ。


少し離れて花全体を眺めたり、鼻を近づけたり、どうやら未礼は喜んでくれているようだ。


よかった。



「3ヶ月ってあっという間だったね」


もう一度、並んでイルミネーションを眺めながら、しみじみと未礼が言った。


「ああ。そうだな」

「あっという間だったけど、楽しかった」


「ああ。私もだ」

私は、未礼と過ごした日々を思い返していた。


私の人生において、この出会いがどういう意味を持っていたのか。


他人を教育するなど、おこがましい。

それがわかっただけでも、未礼と出会った意味はあった。

無理やりにでも理由でもつけなければ、決心が揺るぎそうだった。


ダメなのだ。