足音が、かけよってくる。

未礼だ。

瞬間、我が目を疑った。

間違いなく、私の表情は硬くなっていたことだろう。

現れた彼女の姿に違和感をおぼえずにはいられなかったからだ。


開襟シャツにブルーのVネックセーター、ミニスカート、黒のハイソックスという姿。

これだけ聞けば、どこにでもいる普通の女子高生なのだろうが、未礼に限っては、違った。


抜きん出たプロポーションの上で伸縮性のある薄手のニットが曲線を描く。

広く深めのVネックセーターの下に着ているシャツの胸元は、大きく3つばかりボタンが開け放たれ、(我が父が絶賛していた)深い谷間をのぞかせている。

短いスカートからは、すらりとした長い足。


もはや品が感じられないほど過剰に女っぽさを強調したその姿は、見合い時の“楚々とした娘”の印象とはまるで真逆だった。

まっすぐ未礼が私のそばまで来る。

未礼は両手に何かを持っていた。


右手には白い犬のぬいぐるみがついたシャンパンゴールドの携帯電話。

左手には…、「!??」

私の両目は、左手に持たれているオレンジ色をした、何かに、くぎづけになった。

何だ?

それは過去見たことがある、食品だった。
記憶を呼び起こす。

…確か…あれは確か、そうだ。

魚肉ソーセージ(食べかけ)。


確かに、小学校と違い、高校は飲食物の持ち込みは容認されている。

この教室内は様々な菓子などの香料の匂いで充満している。

しかし何故、魚肉…!?

…-まぁ、腹が減ることもあろう。
急に訪れた私にも非はある。



「どおしたの~?あたしに会いに来てくれたんだ?」

当の未礼は、突然の訪問に気を悪くすることなく、見合い時と変わらぬ笑顔で迎えてくれた。

「…ああ」
気を取り直し、立ち上がる。

「先んじて連絡も入れずに申し訳ない」

「いいよ~、そんなの。ぜんぜん」

未礼は、いっそう明るい声で答えた。

「どうやら、文化祭の取り決めがあるとのこと。私は急用ではないので出直すことにします」

さしあたっての目的は、未礼と交友関係を築くこと。

ひとまず今日のところは携帯電話のアドレスを聞ければ十分だ。

そう思ったとき、