「…てめェ…言いすぎだろそれ…」

「そうかな?ほんとのことだろう?」

「…ちっ」

不良は、ふてくされてそっぽを向いた。

この二人は親しいのだろうか…。

優等生は改めて私に笑顔を向けて言った。

「未礼に何か用があるんだったよね?彼女は今席を外してるけど、すぐ戻ってくるって言ってたから、中で待つといいよ」

「部外者が入っても構わぬのか?」

「もちろん。もうHRは終わっているからね、問題ないよ」

優等生にうながされるまま、教室に足を踏み入れた。

初等部とは違って、個別に独立した座席、さまざまな香料が入り混じった空気。

休み時間のように気安く騒がしい室内を見回すと半数以上と思われる生徒がまだ残っていた。

「それにしては、人が多く残っているようだが…」

「文化祭の出し物を決めなきゃいけないんだけど、うちのクラスなかなか決まらなくてね…。明日までに班ごとに一つアイデアを出さなきゃいけないんだ。
だからみんな、自主的に残ってる…って状態なだけだよ」

「…なるほど」

よく見れば、何人かで集まり、「屋台」だの「舞台がいい」だのと話し合いをしている様子だった。


「窓際の一番後ろ、が未礼の席だよ。いい席だろう?…-どうぞ」

優等生は、未礼の席だという座席に私を案内すると、執事のようにそつなく椅子を引き出した。

身長170cm台後半と思われる優等生は、体つきも、ふるまいも、笑い方もスマートだ。



未礼の座席の前には、金色に染められた長い髪の女子生徒が座っていた。

細く長い肢体に浅黒い肌、顔立ちは面長で大人っぽい。

制服はリボンをせずに開襟、だらしなくシャツのすそをセーターから出し、わざと長めにスカートをはいている。

背は椅子ではなく窓際の壁にもたれるように足を組んで座り、ガムをかみ、携帯をいじっている。

彼女もまた不良と分類される見た目をしていた。

表情を変えることなくちらりと横目で私の姿を見たが、すぐ視線をそらす。

無愛想な女だ。