ジャンは、再び考えこむように、下を向いた。

しばらく、沈黙がながれた。


「今まで色々と助けてもらってきたにもかかわらず、受けた恩を何一つ返せていないばかりか、悩みに気づいてやれなかった。すまなかったな・・・」

うつむくジャンに、詫びを述べると、


「恩を売った覚えなんてないさ!みくびらないでくれよ。同じモノを返して欲しくてキミと接してきたわけじゃない!友だちっていうのはそういうものだろう?」

ジャンは無気になって反論した。
それから、悲しそうにつぶやいた。

「・・・キミは、ボクのことを友だちだと思っていないんだろうけどね・・・」





兄と管理人の絆を目の当たりにしてから、考えていたことがある。



考えていた。

友情とは、人と人の絆とは、一体どういうものなのだろうと・・・。


私は、一人でも大丈夫だと思って今まで生きてきた。
しかし・・・

私は、ジャンや琴湖に助けてもらっている。
最近特に、そう感じる。


だが、はたして私は、助けてきただろうかと。

もっと2人に感謝をすべきなのではないかと。


もらった気持ちや力、同じだけ返せているだろうか。

返せていない。まったくもって。

気をつかってもらってばかりで、私は気づかってやれてない。

申し訳なさが、ふつふつと募ってくる。



そう、私は誰とも対等な関係など築けてはいないのだ。

自分が急に恥ずかしくなってきて、思わずジャンから目をそらした。


もっと、しっかりしなくては。

確かに私は、今自分のことで精一杯だ。
だが、ジャンとて精一杯なのだ。



助けてもらいっぱなしでは、対等な関係とはいえない。


迷いがあるなら背を押す。



私は顔を上げて言った。


「…対等であるべきなのだ。友ならば」



ジャンの瞳が大きく見開いた。