未礼の学級は、SHRは終わっているみたいだったが、教室内には多くの生徒が残っていて、まだ雑然としていた。


学部長は、近くにいた女子生徒に未礼を呼んでもらうため声をかけた。

女子生徒は教室内を見渡し、周囲に声をかけ、未礼の所在を確かめている。

「今教室にはいないようです。荷物はあるみたいなんで、まだ帰ってないと思いますけど…」

校内放送で呼び出してはという学部長の提案を制し、私は教室の前で一人で待つことにした。


長い廊下を何度も、おきあがりこぼしさながら頭を下げる学部長の姿が見えなくなるまで見送ってから教室に目をやると、
一人の男子生徒と視線がぶつかった。


教室の扉を身をかがめるようにして出てきたその男子生徒に、私は思わず目を見張った。


180cmはゆうに超える筋骨たくましい体格のこの男は見るからに“不良”だったのだ。

日に焼けた肌に、赤い短髪を逆立て、首には太めの銀の鎖と大きめのヘッドホンが巻きついている。

ロック調の黒いTシャツの上に、学校指定の白の長袖シャツをボタンを留めずに羽織っている。

その袖は腕までまくられていた。

顔つきは、眉間にしわを寄せ、にらむような一重の鋭い目つきをしており、いかにもガラが悪そうだ。


そのいかつい男は、上履きのかかとを踏んだがに股の足をドスドスと粗暴な歩き方で、距離をつめて来た。

そして、腰履きのズボンのポケットに手を突っ込んだまま顔を斜めにかたむけて、いぶかしげに私を見下ろすと、頭から足先まで視線をはわせた。


「なんだぁ?ガキ。未礼になんの用だ?」

ガキ?さらには未礼を呼び捨てにしている。

お前こそ未礼の何だというのだ。

初対面にもかかわらず、なんと不愉快な男か。