「のんた、コテ取って」

「ん」

陽は毎朝、洗面所を占領して一生懸命髪の毛を巻いてる。
髪の毛傷みそう…。

一方、私は部活に邪魔にならないぐらいの軽めボブ。
だから軽くアイロンを当てるのみ。

「…のんたも髪の毛伸ばしたら?」

「無理」

「なんでー?のんたは可愛いんだから♪」

「うるさい、髪の毛終わったなら退けて」

「のんたのばーか」

「…………」

見て分かる通り私は愛想がない。
陽は愛嬌があって誰にでも好かれるタイプ。
こうなったのは中学生から。
なんか陽と一緒にいると、軽蔑された目が私に注がれるから嫌だった。

だから陽との間に壁を自ら作ったのだ。

「のーん!!スクールバスに乗り遅れるわよ!!」

「分かった」

「のんた後ろ跳ねてるよ?」

「部活やったら直る」

こうやって陽に素っ気なくしたら楽になった。
多分それは陽も同じだと思う。

「忘れ物ない?」

「……ない」

「これ、お昼代ね?」

「ありがとう」

実は私の家は母子家庭。
だけど母親は実業家で、なんかの社長をしているらしい。
だからお弁当を作る暇がないのだ。

「んじゃ行ってきます」

「部活で怪我するんじゃないわよー!!」

「(うぜー)」