もう夢を視る度に聴かされ続けたから、きっと意識すれば歌えるだろう…なんて三春はぼんやり考える。


――暫くのあいだ、そのまま歌を最後まで聴き続ける。いつも視ている夢と同じだ。

けれどなかなか止まない歌声は、いつもよりも鮮明に旋律を奏でている気がした。
三春はふと思い立ち、辺りを見渡してみる。


「……ッ?!」


今まで何も存在しなかったその場所に、人が居た。

いや、正しくは人影だ。


無限の暗闇にただ一つ仄かな白を帯びて佇む細い影は、此方に気付く訳でもなく其処に立っている。

速まる胸の鼓動を押さえ付けながら、視線はその人影へと釘付けになった。

――俺の夢なのに、何で知らない奴が居るんだ?


「……おい!」


考える前に、三春は白い人影に向けて叫ぶ。