ふと気がつくと、
身体中に激痛が走る。

はじめに頬を叩かれた
痛みなんかとは、
比べものにならない。

「い…たいよぉー…っ
おかあさぁーんっ」

大泣きする私の元へ
お母さんは泣きながら
走ってきてくれた。

そっと抱きしめて、

「ごめんね。痛いよね…
ごめんね舞香」

泣き疲れて眠るまで、
お母さんはずっと

「ごめんね」

と言い続けていた。


この時お母さんも本当は
辛かったのに、
痛かったのに…


「ごめんね」

は私の方だよ。



それから2週間ほど、
保育園にも
行かせてもらえず、
ひとり 部屋で遊んでた。

父の機嫌が直った頃、
やっと保育園に行けた。

「まいか だいじょうぶ?
ケガへーき?」

「なんで まいかが
たたかれたんだよ?」

あの日あの場にいた
友達たちが心配して
駆け寄ってきてくれた。

私はただ会えたことが
すごく嬉しくて、
子供ながらに
苦し紛れの嘘をついて
誤魔化した。

「へーきだよ!!
おとうさんと
おでかけする
やくそくわすれてたから
いけなかったんだ」

このとき既に
私の身体や心には
“父への恐怖”
が刻み込まれていた。

刃向かえば叩かれる。
恐い…恐い…。
それからずっと、
父との約束を忠実に
守りながら生活をした。


でも私は元々
お母さんっ子だから、
父よりお母さんの傍が
大好きで、
そのたび父は機嫌を
悪くして、酷いときは
私の髪を引っ張り
クッションで
顔を抑えつけたりした。

お母さんはすぐに
私を助けようと
してくれる。

でも父の力に適う訳も
なく、父が満足するまで
私はもぅ…ただ
されるがままの人形
になってしまった。