「バッカみたい!」
と、平然を装い、そのまま席を立った。
「ちょっ、オイ待てって!」
と言う翔の声に反応する術もなく、私は店を出た。
早足で歩く私に、走ってきた翔はすぐ追いつき言った。
「なんだよ…そんなキレっこともねえだろ!」
「あんな事するんじゃなかった」
私は愛想の欠片もなく言った。
「そんな恥ずかしがんなって、なぁ?」
と言いながら翔が強く手を握ってきた。
「別に恥ずかしがってないから!!……つうか私、人前でベタベタしたくないし、されたくもないの!!」
翔が傷つくと知りながら、それでも自分を制御する事もなく、ただ感情にまかせて私は言い放った。
翔が掴んでいた手を解いた。
そして、さっきまでとは違う表情で、
「ああそうかよ。悪かったな」
とだけ言い、身を翻してそのまま何処かへ行った。
取り残された私は、その原因を作ったのにも関わらず、やけに苛ついている自分が、とてつもなく嫌に思った。
そこにはただ、自己嫌悪と虚しさだけを纏った、みっともない私が一人、残った。