「それにさ」
寿也は左手にピンク色の花瓶、右手に黄色の花瓶を持ったまま俺を見た。
「お前が気に入ったオルゴール、もし水上も気に入ってくれたらさ、ラッキーじゃね?
ほら、仲って共通の好きなものから深まっていくもんじゃん?」
このオルゴールを水上も気に入る?
ちょっとありえない。
作曲家の名前どころか、曲名すら分からない音楽が流れるこのオルゴール。
おまけにデザインもダサい。
こんなオルゴール、誰が気に入るんだよ。
いや、俺は気に入ったけど……。
「ていうか1500円でも結構な値段だと思うけどね、俺は」
結局寿也の提案を素直に聞いてしまった俺は、レジで包装をお願いしてしまった。