「瑞希っ!」


寿也が俺にデコピンを食らわす。


「何ボーっとしてんだよ。
何かいーもんでもあったの?


「……あ……ああ」


優しい音の余韻が抜けない。


俺が間抜けな声で返した返答を聞いて、寿也は不思議そうに首を傾げた。


寿也は俺が手に持っていたものを見る。


「……オルゴール?」


そう言った瞬間、吹き出す寿也。


「ぶは!
オルゴール!?
もしかしてお前オルゴールなんか欲しいの!?
み~くん、かーわーいー!」


寿也のからかいを相手にする気が失せる程、俺の心は穏やかになっていた。