「……え?」

「え?ってなんだよ。
もう名前忘れた?
瑞希。
宮本瑞希」


俺の名前を聞いた途端、綺麗な顔は一瞬にして不機嫌な色を浮かべる。


「あの……仲良くする気ないって言いましたけど」

「ん?
あんたがなくても俺はあるから」


俺のことを冷たい目で数秒見つめると、こいつは再び窓の方に首を向けた。


「おいおい。
無視すんなよ。
ていうかさ、俺の何がそんなに気にくわないわけ?」

「……」


返答ナシ。


完全ムシ。


怒りというより、動揺の方が大きかった。


女に無視されたことなんて、生まれて初めてだったから。