自分に言い聞かせるようにあたしは大きく深呼吸をする。


「ほら、そろそろ授業始まっちゃうじゃん。怒られちゃうよ?」

綾はしぶしぶ自分の席に帰り、おとなしく座った。


それからあたしは綾を避けるように学校を早退した。


「はあ~、なんでいっつもこうなんだろう。」

あたしが手に入れたいと思うものは、いつも気がつくと誰かのものになってしまっている。

小さい頃親に頼んだ誕生日プレゼントの人形だって、本当は違うものが欲しかった。


慧だってそう。

もし、あのときあたしが「いいよ。」って言ってたら、今慧の隣にいたのはあたしかもしれなかった。


・・・まあ、そんなことあるわけないか。