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夢の中。
今日は、早紀はちゃんと歩いて入れた。
相変わらず、真っ黒な鎧が待っていてくれる。
「昨日は、どうもありがとう」
自分を助けてくれた男に、早紀はお礼を言った。
おかげで、すっかり痛みもなくなり、動けるようになったのだ。
すると。
「ぶっ…ぶふっ…お、お前、バカだろ?」
突然、鎧をガチャガチャ鳴らしながら、男は爆笑するではないか。
こんな滑稽なことはない、と言わんばかりだ。
え? あれ?
お礼に爆笑が返ってくるとは、思わなかった。
確かに、この鎧も魔族側のものなのだから、お礼なんてものを素直に受け取ることはないのかもしれないが。
「大体…よくお前、今日歩いてこれたな」
オレの見立てじゃ、全治一週間だと思ったがな。
まだ、笑いの波動を含む言葉で、しかし、不思議そうに早紀を見る。
それほど、あの傷はひどかったということだろうか。
「おかげさまで…」
早紀の言葉は、また鎧を笑わすだけとなった。
あ、そういえば。
笑う彼を前に、早紀は何かを思い出そうと意識を巡らせる。
夢の中のことを現実に持ち出したり、逆をするのは意外に難しい。
今日、真理に鎧の言葉を説明する時も、そうだった。
その真理が、彼女にこう言ったのだ。
「鎧と話が出来るのなら…『抜け殻でもいいのか』、と聞いておけ」
そう聞けば分かると。
それ以上の説明は、真理はしなかった。
ようやく言葉を捕まえられたので、早紀は鎧の前で復唱した。
「新当主からのご質問か…へぇ、なるほど…なんとなくお前が元気な理由がわかった」
興味深そうな、しかし、少し意地の悪い声の音。
「じゃあ、こう伝えておけ」
兜が、早紀に向かってずいっと近づいてくる。
よく見ると、顔の造型が結構怖い気がする。
「『抜け殻上等』…ってね。」
すっごい──悪そうな声だった。
その後で、ぼそりと。
「お前の魔力は、かなり少ないな…不便だぞ」
とばっちりで早紀は、文句を言われるハメになった。
夢の中。
今日は、早紀はちゃんと歩いて入れた。
相変わらず、真っ黒な鎧が待っていてくれる。
「昨日は、どうもありがとう」
自分を助けてくれた男に、早紀はお礼を言った。
おかげで、すっかり痛みもなくなり、動けるようになったのだ。
すると。
「ぶっ…ぶふっ…お、お前、バカだろ?」
突然、鎧をガチャガチャ鳴らしながら、男は爆笑するではないか。
こんな滑稽なことはない、と言わんばかりだ。
え? あれ?
お礼に爆笑が返ってくるとは、思わなかった。
確かに、この鎧も魔族側のものなのだから、お礼なんてものを素直に受け取ることはないのかもしれないが。
「大体…よくお前、今日歩いてこれたな」
オレの見立てじゃ、全治一週間だと思ったがな。
まだ、笑いの波動を含む言葉で、しかし、不思議そうに早紀を見る。
それほど、あの傷はひどかったということだろうか。
「おかげさまで…」
早紀の言葉は、また鎧を笑わすだけとなった。
あ、そういえば。
笑う彼を前に、早紀は何かを思い出そうと意識を巡らせる。
夢の中のことを現実に持ち出したり、逆をするのは意外に難しい。
今日、真理に鎧の言葉を説明する時も、そうだった。
その真理が、彼女にこう言ったのだ。
「鎧と話が出来るのなら…『抜け殻でもいいのか』、と聞いておけ」
そう聞けば分かると。
それ以上の説明は、真理はしなかった。
ようやく言葉を捕まえられたので、早紀は鎧の前で復唱した。
「新当主からのご質問か…へぇ、なるほど…なんとなくお前が元気な理由がわかった」
興味深そうな、しかし、少し意地の悪い声の音。
「じゃあ、こう伝えておけ」
兜が、早紀に向かってずいっと近づいてくる。
よく見ると、顔の造型が結構怖い気がする。
「『抜け殻上等』…ってね。」
すっごい──悪そうな声だった。
その後で、ぼそりと。
「お前の魔力は、かなり少ないな…不便だぞ」
とばっちりで早紀は、文句を言われるハメになった。