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「よぉ」

 呼びかけられて、早紀ははっとした。

 気づいたら、また彼女は歩いていたのだ。

 そして、夢の中に入っていた。

 向こうにいるのは、あの鎧。

 そっか。

 早紀は、思い出した。

 真理に連れて行かれた怖いところから帰ってくるなり、彼女はバタンと意識を失ってしまったのだ。

 疲労、緊張、恐怖。

 いろいろ積み重なったのだろう。

 早紀の人生の中で、あんなに怖い思いをしたのは初めてだったのだから。

 おまけに。

 おまけに、真理が笑うのを初めて感じた。

 昏い笑み。

 早紀は、ようやくほっと出来て、その場にへたりこんだ。

「お疲れのようだな」

 鎧の男は、楽しそうだ。

「うん…疲れた。怖いね、みんな」

 この鎧の男は、話しやすい気がする。

 他の鎧よりも、怖い感じがしないのは、契約をした関係だからだろうか。

「あっはっは、あいつらのマヌケ面を見たか? オレを『4th』と見下しながらも、警戒しまくりだったな」

 早紀の恐怖など、どうでもいいことのように、鎧は思い出し笑いを始める。

 4th?

 そういえば、あの場でも聞いた言葉だった。

 一番怖い闇が、真理に向かってそう言ったのだ。

『極東エリアの4th』、とかなんとか。

「他に三匹いただろ? クサレ鎧どもが。4体の鎧の中で、新参者は一番びりっけつ。だから…4thだ」

 口にしなかった早紀の疑問を、彼は笑みと共に語る。

 しかし、どう聞いても他の鎧と仲良しとは思えない。

 ライバル、なんだ。

 だから。

 だから、真理も笑みを浮かべたのか。

 他の三体に、存在を気づかれないまま近づいた事実が、どうも彼を喜ばせたようだから。

「この鎧って、あんなこともできるのね」

 早紀は、うまくつながらない記憶を混ぜ合わせながら、ぽろっと口にした。

 刹那。

「ぶはっ…おまえ…おまえ…誰があんな技を繰り出したか分かってないのか!?」

 息も絶え絶えに笑う鎧なんて──そうは見られるものではなかった。