朝、鎧の男と別れて、目を覚ましたら。

 タミがいた。

 ええー?

 早紀が驚いて飛び起きようとすると、彼女は手を離してくれた──握られていたのだ。

 手袋のない左手は、青くはなかった。

 その手を、再び手袋の中にしまいこみ始める。

「え、ええと…」

 朝から、一体ここで彼女は何をしていたのか。

 早紀が把握できずにいると、ちらとタミが彼女を見た。

「ほとんど、魔力の消耗はありません…」

 そう言われて。

 はたと、昨日の記憶がよみがえる。

 真理の言った言葉を、だ。

「もしかして…あなたがお医者さん?」

 その問いは、とてもマヌケなものに感じた。

 タミが、無反応のまま早紀を見ているのだ。

 言葉もない。

「え…あ…その…あなた…この家に…雇われてるの?」

 これまでずっと、真理のお嫁さん候補とばかり思っていた。

 だから、タミ=医者の計算式が成り立たなかったのだ。

「その質問なら…『はい』です」

 澱みない返事に、早紀は混乱した。

 医者という言葉には、語弊があるようだが、タミがこれから早紀の怪我の後処理(?)をするというのだ。

「ええと…どんな仕事か…聞いていい?」

 具体的に、タミが何をするために雇われているのかは、知らないのである。

 怪我を負えば、鎧が治してくれるはず。

 治った後に、何があるというのか。

「怪我を、鎧があなたの魔力を使って治すと…あなたは魔力欠乏症に陥るということです。その補充を…私がします」

 ああ、そう。

 そう、魔力欠乏症ね。

 そういえば、記憶が途切れていた時間があったような。

 魔力がなくなったら、困る状態になるんだ。

 って…あれ?

 早紀は、ふと思考の矛盾に気づいた。

 前の時は、彼女はいなかったのに──どうやって治ったんだろう。