時計は、ちょうど六時を指していた。
窓の外は、やはりまだ明るい。


いつもなら、英はこの時間になると市川家を後にし、栖栗一人で引き続き勉強をするのだが、そんな彼は今日はいない。

時計の秒針は静かな部屋によく響く。
栖栗は、一人だった。

聞こえる秒針を耳にしながら、栖栗は両手で頭を抱えていた。

右手にはシャープペンシル。
机の上には、英語の教科書、何も書き込まれていない真っ白なノートがある。

周りから見れば、その光景はまるで現実から目を背けようと悩む若者の姿だ。

だが、実際はそうではない。

夕方、がんがんと打ち付けられるような頭痛を感じてから、ずっとこの調子なのだ。

勉強はおろか、考えることすらまともに出来ない。

明日はテストがあるというのに。


「──っ‥」


薬をきらしていたので、今は頼れるものはない。

買いに行こうにも、この痛みを抱えて外に出るのは億劫だし、パシりに使おうと思っても、今は英に会うわけにいかなかった。

やり場のない痛み。
時間が経過すると共に、今度は段々と体が熱くなる。


「‥このままじゃ、前の二の舞いになるわ」