そんな光景を見ていた母親は、英を見つめながら絶句していたものの、すぐに──
「‥‥ごめんなさいね。この子、言い出したら聞かなくて‥」
と言って、もう一度頭を下げた。
「いいですよ。オレ、結構小さい子好きですし、それに──」
「ありがとー」
英の声に和奏の声が重なった。
どうやら、低音と高音が見事に重なったらしく、少しだけハモってしまった。
母親が苦笑いをしたものだから、英も苦笑いをする。
「本当、ごめんなさいね」
「行こっ!」
母親が言うや否や、和奏は英の手を引いて走り出した。
「うわ、!」
幼いながらも、和奏の力はとても強く、掴まれた手からはざらりとした感触がする。
どうやら、砂のせいらしい。
英は、何て強引な少女だろうと思った。
人の話は聞かないし、意地っぱり。
自分の意見は何がなんでも通らせる。
子供の内は当たり前なことかもしれないが、将来は、自分がよく知る彼女のようになってしまう気がした。
「ねぇ、お兄ちゃん」
和奏が口を開く。
表情は見えない。
「お城作ったら、いっぱいいっぱい元気になってよねっ!」