「‥‥‥チワワ、帰ったわね」
栖栗は、ドアに付いている小さな覗き穴から英の後ろ姿を見送ると、複雑な表情をしながら足元にいるゴールデンレトリバーへと視線を向ける。
切なげに揺れるゴールデンレトリバーの瞳は、まるで人間のそれだった。
栖栗は、溜め息を吐いてスクールバックを肩に掛けると、しゃがみ込んで視線を合わせ──
「“リツ”はどっちの味方なの──?」
眉を顰めた。
ゴールデンレトリバーは、ハッハッと荒い呼吸をしながら、遠くを見つめる。
どうやら、弟分が相当のお気に入りらしい。
そのとき英は、毎朝時間を潰している公園で足を止めていた。