訴えかけているようにも見える、黒水晶のような瞳に、英が心を揺さぶられたその瞬間──
「以上解散!!!」
栖栗は、そう言って自分の中にある全ての力を振り絞って英の足を、踏み付けた。
ガッ──!!!!
そして、英は先日蹴られた脛にある巨大な青痣を思い出して、瞬時に足を引っ込める。
反射、とは実に恐ろしいものだ。
けれども時すでに遅く、既に踏み付けられてしまった左足を見て、英は慌ててしゃがみ込む。
痛いっと思い切り叫ぶ前にドアは閉まり、英は外に一人取り残されてしまった。
周りから見れば、人様の玄関前でしゃがみ込んでいる英は、バカ、あるいは不審者にしか見えない。
英は周りを気にしつつも、鈍い痛みを必死に堪えながら溜め息を吐き、スクールバック片手に門柱へと歩き出す。
そして──
「‥‥何か顔、赤くなかったか‥?」
呟く。