くしゃみが出そうになるのを必死に堪えながら、空いている手で口許を押さえるが──段々と頭も痛くなってきた。

打ち付けられているようにがんがんする。

認めたくなかったことを、認めなくちゃいけなくなる。
もしそうだとしたら、英には、余計に帰ってもらう必要があった。

自分のせいで周りを巻き込むことはよくあるし、基本的に栖栗は人を振り回すのが好きだから、それについては何とも思わない。

けれど、教えてもらった人に対して恩を仇で返すような薄情な人間ではない。


「そうだけど‥今日はそうゆうのとかちゃんと教えたいし」

「大丈夫。一人で出来るから。こう見えて私頭もいいの」


──“も”って何だ!


英は心の中でツッコミを入れるが、少しでも気を抜いてしまったらドアが閉まってしまうので、口には出さない。