その一心で英はドアノブをがっしりと掴み、自分の方へと引っ張る。

お互いに引っ張られているドアノブの可哀想なことと言ったらないが、お互い物凄く必死なのだから仕方がない。

近所迷惑そっちのけで争う二人は高校生というよりは、周りから見れば、まるで小学生だ。


「何で。だってテストは明日だろ」


英は、ドアが閉まらないように足をストッパー代わりにする。

納得がいかない、と言わん許りに眉を顰める英から逃げるように、栖栗は、視線をそろそろと泳がせた。


「いらない」

「‥‥中途半端になる。それに、ちゃんと教えてないだろ」


少し間を置いてから、言う。

如何にも、な英の言葉に栖栗も眉を顰めた。


「っきょ‥今日は苦手なとこやればいいんでしょ?」


栖栗は、鼻が何かにくすぐられているかのようにむずむずしたものだから思わず声が裏返ってしまい、悔しそうにぎゅっとドアノブを掴む。