過ぎる不安に栖栗は拳を作った。
テストは明日に迫っていた。
何もかもが、あの日に近い。
気を付けていたはずなのに、自分の失態のせいで、また繰り返してしまう。
そんな気がした。
いつもより日差しは強かったにも関わらず、栖栗は全く汗をかかなかった。
横で、額の汗を拭う英がうらやましかった。
赤い首輪はスクールバックの中で揺れている。
「今日は、一人で勉強するから」
市川家に上がり込もうと足を一歩玄関に踏み入れたところで、きっぱりと言われてしまった英は、目を見開いた。
「は‥?」
「だから、今日は一人で勉強するって言ったの!」
栖栗は声を荒げるとドアノブを一生懸命引っ張る。
だが、英とて一度引き受けた以上は最後まできちんと教えたい。
何より、栖栗はいつも変だが今日は何万倍もおかしいから、放っておきたくない。