「‥‥チワワも今ごろは勉強してるのかしら‥」


首輪を見つめながら、溜め息混じりに呟く。

人工の明かりで照らされた赤い首輪は、鈍く光り、栖栗を誘う。

それを見ていると、元気が湧いてくるし、まだまだ、頑張れる気がした。


「‥‥不思議」


苦手だった英語も、分かるにつれて楽しくなってきたし、これならば二学期の中間テストも何とかなる気がした。


「あ‥そっか、」


栖栗は、パンッと手を叩くと瞳をきらきらと輝かせる。


「これがチワワマジックなわけね──!」


今はもうすっかり夜中だということを忘れて、栖栗は、椅子から立上がり大声で叫んだ。
虚しく響く声を気にすることなく、立ち上がった拍子に机の下に転がり落ちてしまったシャープペンシルを、拾いあげようとしゃがみ込めば──


「栖栗!!あんた何時だと思ってるの!!!」


と下の階から怒鳴り声。

現在、十一時。


──そっくりそのまま返すわ、お母さん。


栖栗は首を竦めると、シャープペンシルを片手に椅子に座った。