しかし、当の栖栗は、ただただ微笑している英がもどかしくなり、ムッと口をへの字に曲げていて。


ただ、褒めて欲しかったのだ。

昨日、自分はあれだけ頑張ったから。


「──っちょっと!もっと何か言うことあるでしょ!!」

「偉い偉い」


にっこり、と貼り付けたような笑みを浮かべながら、英は手にすっぽりと収まってしまいそうな栖栗の頭を撫でる。

わしゃわしゃと、髪を掻き回すように撫でると、それまで照れくさそうにしていた栖栗が段々と顔を顰めていく。

そして──


「ぺ、ペットの分際で頭撫でるな‥!」


と、ローファーの先でゲシッと、英の脛(すね)を蹴る。

そして、隙が出来たところで透かさずルーズリーフを奪い、乱暴にスクールバックに詰めた。

さすがにローファーの先で思い切り打ち込んでやったせいだろう、英は途端にしゃがみ込み、痣が出来るであろう脛を掌で夢中になって撫でていた。

歪む顔は、酷く痛々しい。


「せ、せっかく褒めたのに‥」

「うるさい!何時間かけてブローしたと思ってるのよバカチワワ!」