だが、それはまだ英にしてみれば、明るい方だった。
春夏秋冬、時間も関係なく行われる生徒会会議のお陰で、真っ暗な道を歩くのは慣れっこだったからだ。
「帰っていいわよ。単語は明日までに必ず覚えてみせる。だから、チワワは帰って自分の勉強なさい」
「でも‥」
英は言葉を濁した。
けれど、一度言い出したら聞かない栖栗が、引くはずもなく。
「飼い主の命令は絶対!以上!」
有無を言わず、人差し指を立てて、英をビシッと指差す。
そして、すくっと立ち上がり英の後ろに回ると首輪を外した。
それは“放し飼い”の合図だ。
「‥‥じゃあ、また明日」
首輪がなくなったことに関しては、喜ばしいことだ。
だが、このまま帰るのはいまいち腑に落ちない。
英は顔を顰めながらも、缶ペンケースにシャープペンシルをしまい、スクールバックに戻す。
そして、それを片手に立ち上がるとルーズリーフをテーブルの隅に寄せた。