あまりに満足そうな彼女に、ワイシャツのシワを整えながら、英は一瞬、何故自分がここにいるのかを忘れそうになった。
そして、栖栗も「せっかく教えてもらうのだから、失礼なことはできない」という先ほどまでの、真摯な気持ちをすっかり忘れ、勉学に勤しむのであった。
そんな彼女の片腕に抱かれているゴールデンレトリバーは、優しそうな表情を浮かべながら、口を半開きにさせていつまでも尻尾を振っていた。
英が、自身が着けている首輪とゴールデンレトリバーが着けている首輪を見て、肩を落とすのは、その数秒後のこととなる。
約六ページあるテスト範囲の中の、太字の新出単語を全てノートに練習した栖栗は、その間に英が作っていたテストをやっていた。
テスト、と言っても、意味が書いてあるその横に先ほど練習した単語を書いていくという、至って簡単なものだ。
意味を見て単語を書く問題が表にあって、単語を見て意味を書く問題が裏にある。